パーカーコーポレーション(9845)は、年間53円の配当をこれからも支えられそうか
自動車の車内の音を抑える防音材や、車体の継ぎ目をふさぐ材料をつくる、パーカーコーポレーション(9845)を、17期分の決算資料で見てみました。
※業績・配当の記載は、2026年3月期の決算短信(5月12日)と2027年3月期第1四半期の決算短信(8月3日)までの公表資料に基づきます。
(この記事は、ひとりの観察者ミーナの記録です。売買をすすめるものではありません。数字は会社の公表資料から拾いましたが、拾い間違いがあるかもしれません。投資の判断はご自身で。)
更新日:2026-10-25
☕ 配当は25円から53円へ。今期も同額の予想。この記事で確かめること
パーカーコーポレーションの年間配当は、2026年3月期に25円から53円へ増えました。会社は翌2027年3月期も53円を予想していますが、純利益は6.3%減の予想です。大きく増えた配当を、これからも支えられるのでしょうか。
気になったのは、次の3点です。
①なぜ、配当を大きく増やせたのか。
②利益が減っても、53円を支える余力はあるか。
③さらに増配を期待するなら、何を確かめたいか。
全体の見方は「おわりに」に、その根拠は各章にまとめています。参考の株価と配当利回りは、補足の冒頭にあります。まずは、何で利益を生んでいる会社なのかを見ていきましょう。
🏢 車の防音材と薬品で、何を稼いでいる会社か
車内に伝わる音や振動を抑える材料。車体の継ぎ目から、水やほこりが入るのを防ぐ材料。パーカーコーポレーションは、こうした自動車向けの材料などを扱う会社です。
薬品や工場向けの設備も扱い、材料はお客さんと一緒に開発して納めます。決算では、事業を5つの部門とその他に分けて開示しています(成り立ちと大株主との関係は補足A。いちばん大きな株主は日本パーカライジング(4095)です)。
表A:2026年3月期の部門別の売上と営業利益
| 部門 | 売上高(億円) | 売上の割合 | 営業利益(億円) | 主な製品 |
|---|---|---|---|---|
| 化成品 | 318.0 | 43% | 24.1 | ボディーシーラー、振動と音を抑える材料 |
| 産業用素材 | 204.0 | 27% | 18.9 | 自動車・エアコン用の防音材 |
| 化学品 | 73.7 | 10% | 6.2 | 工業用の洗浄剤・防錆剤 |
| 化工品 | 68.5 | 9% | 8.9 | カーケア用品、電子部品向けの薬品 |
| 機械 | 34.1 | 4% | 4.2 | 食品・自動車工場向けの設備 |
| その他 | 34.4 | 4% | 2.3 | 貿易、生活資材 |
| 合計 | 733.0 | 100% | 64.8 |
- 売上高は外部のお客さんへの売上、営業利益は部門ごとのセグメント利益です。0.1億円未満を切り捨てています。割合は部門ごとに切り捨てているため、表示した各部門の割合を足しても100%にはなりません。
- (出典:2026年3月期決算短信 セグメント情報)
自動車向けの材料を主力とする2部門で、売上の約7割です
いちばん大きいのは化成品部門の318億円で、自動車の車体に使うボディーシーラーや、振動と音を抑える材料をつくっています。次が産業用素材部門の204億円で、自動車とエアコンの防音材です。この2部門で売上の71%になります(522億円÷733億円。表Aの割合は部門ごとに切り捨てた値です)。ただし、産業用素材部門には家電向けの防音材も含まれるので、自動車向け売上の比率そのものではありません。主要な取引先が自動車業界であることは、2023年3月期以降の決算短信に書かれています。会社はリスクの項目で「特定の業界・地域だけに依存しないことによりリスクの低減に努めております」としています。
残りは3つの部門です。工業用の洗浄剤や防錆剤をつくる化学品部門と、洗車場で使う撥水剤やワックスなどの化工品部門。そして、食品工場向けの設備を輸入販売し、自動車工場向けの設備を設計・製造する機械部門です。電機や鉄鋼、食品などの業界にも納めています。その他には、合成ゴムのまな板などの生活資材が入ります。
売上の41%は海外です。2023年に北米などの事業を引き継ぎました
売上の41%は海外で、中国が13%、アメリカが10%です。製造拠点はタイやメキシコ、インドなどにもあります。2023年4月には、国内の大手素材メーカーのグループから鋼板用補強材などの事業を引き継ぎ、アメリカとメキシコ、中国の3社を子会社にしました。この年の決算にあたる2024年3月期に、化成品部門の売上は205億円から308億円へ増えています。
📊 大きく増えた配当。会社は何を方針にしているか
2026年3月期は、純利益が増え、利益のうち配当に回す割合(配当性向)も高まりました。この両方が重なって、年間配当は25円から53円へ増えています。純利益は28.1億円から46.9億円へ、配当性向は22.2%から28.3%へ上がりました。この28.3%は実績で、今後の目標として示された数字ではありません。これまでの配当も、17期の表で確かめていきましょう。この会社は2006年の株式分割のあと分割をしていないので、1株当たりの数字は当時の開示値のまま比べられます。
表B:17期の純利益・EPS・配当・配当性向・自己資本比率
| 決算期 | 純利益(億円) | EPS(円) | 1株配当(円) | 配当性向(連結) | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2010年3月期 | 0.5 | 2.24 | 3 | 未確認 | 49.1% |
| 2011年3月期 | 3.5 | 13.50 | 4 | 29.6% | 46.7% |
| 2012年3月期 | 6.8 | 26.42 | 4 | 15.1% | 43.4% |
| 2013年3月期 | 6.8 | 26.53 | 5 | 18.8% | 46.1% |
| 2014年3月期 | 16.4 | 63.59 | 5.5 | 8.6% | 41.6% |
| 2015年3月期 | 20.9 | 80.89 | 6 | 7.4% | 47.2% |
| 2016年3月期 | 19.0 | 73.53 | 6.5 | 8.8% | 48.8% |
| 2017年3月期 | 26.1 | 101.08 | 8.5(うち特別1) | 8.4% | 50.9% |
| 2018年3月期 | 24.3 | 94.12 | 10 | 10.6% | 53.1% |
| 2019年3月期 | 27.1 | 105.29 | 12.5 | 11.9% | 55.9% |
| 2020年3月期 | 25.1 | 97.74 | 13 | 13.3% | 59.0% |
| 2021年3月期 | 23.7 | 92.91 | 13 | 14.0% | 60.0% |
| 2022年3月期 | 15.2 | 59.88 | 14 | 23.4% | 61.5% |
| 2023年3月期 | 24.7 | 99.02 | 18 | 18.2% | 60.9% |
| 2024年3月期 | 36.0 | 143.99 | 22 | 15.3% | 59.9% |
| 2025年3月期 | 28.1 | 112.40 | 25 | 22.2% | 64.2% |
| 2026年3月期 | 46.9 | 187.57 | 53 | 28.3% | 66.2% |
- 純利益=親会社株主に帰属する当期純利益(2015年3月期以前の科目名は「当期純利益」)。0.1億円未満を切り捨てています。2010年3月期と2011年3月期は有価証券報告書、それ以外は各年の決算短信の値です。
- EPS(1株当たり当期純利益)と1株配当は、各年の開示値です。EPSは自己株式を除いた期中平均の株数で計算されています。発行済株式数は17期とも26,801,452株で、自己株式は2026年3月末で1,773,023株(6.6%)です。2006年10月の株式分割(1株を2株)のあと、株式分割はありません。
- 配当性向(利益のうち配当に回す割合)と自己資本比率には、会社が決算短信で開示している連結の数字をそのまま使っています。2010年3月期の配当性向は、その年の決算短信が見つからず、確認できていません。
- 特別配当は1回です。2017年3月期の期末5円のうち1円が、過去最高益を理由にした特別配当でした。記念配当はありません。
- (出典:各年の決算短信、有価証券報告書 第83期から第86期・第99期)
純利益が減った年にも、配当は維持か増額でした
1株配当の列を2011年3月期から追うと、前の年より減った年は一度もありません。据え置きは2012年3月期と2021年3月期の2回です。いっぽう純利益の列は6回、前の年を下回りましたが、そのうち5回は増配でした。配当性向は、2014年3月期から2021年3月期は7.4%から14.0%の間でした。純利益が16.4億円へ増えたあとも、配当は5.5円から13円へと少しずつ増えています。2022年3月期から2025年3月期は、15%台から23%台で推移し、2026年3月期に28.3%です。どれも過去の実績で、将来の配当を約束するものではありません。
2026年3月期の配当は、期初予想の28円から53円へ。会社の理由は「業績及び財政状況を勘案し」です
年間配当の予想は、期初の28円から、2025年11月4日の業績予想の上方修正にあわせて33円(中間16.5円)へ引き上げられました。2026年5月12日には、期末配当を予想の16.5円から36.5円にして年間53円とする増配が発表され、6月25日の株主総会を経て実績になりました。
会社が増配の理由に挙げたのは、業績と財政状況です。開示は、安定配当の基本方針を先に示しています。そのうえで「この方針に基づき、業績及び財政状況を勘案し、1株当たり期末配当金を36円50銭にすることといたしました」が理由です。53円への増配について、会社の開示に記念配当・特別配当という区分はありません。
翌2027年3月期も、年間53円(中間26.5円、期末26.5円)を予想しています。予想純利益44億円に対する配当性向は30.1%です。
配当の方針は「安定的な配当を継続する」。数値の目標や下限は、確認した資料には示されていません
会社サイトの「配当方針・配当金の推移」には、こう書かれています。「当社は、財務体質と経営基盤の強化を図り、長期的な視点に立って株主の皆様への安定的な配当を継続することを心がけております」。決算短信と有価証券報告書も同じ趣旨の文で、年2回の配当を基本としています(中間は取締役会、期末は株主総会で決めます)。
今回確認した資料では、配当性向の数値目標や、配当額の下限は確認できませんでした(確認した資料の範囲は、記事末尾の「調査範囲」に書いています)。年間53円の予想はありますが、53円を維持すると定めた方針とは分けて考えています。
2021年3月期は、いちど9円への減配を予想しましたが、年間13円を維持しました
実績では減配しなかった年が続いていますが、途中の予想まで一度も下がらなかったわけではありません。
新型コロナの影響を見込んだ2021年3月期には、会社はいったん年間9円を予想しました。2020年5月12日の決算短信の文は「厳しい現状を勘案して中間3円、期末6円、年間で9円」です。前の年の13円を下回る予想です。その後、利益が当初の予想を上回り、期末配当を6円から10円にして、実際の配当は13円に据え置かれました。理由は2021年5月11日の開示にあり、「2021年3月期の連結業績は前期並みに回復いたしました事を勘案し」でした。この年度には、特別利益として投資有価証券売却益10.9億円も計上されています。
配当を維持した実績がある一方、見通しが厳しいときには減配を予想したこともある。この両方を踏まえて、今後の方針を見ていきましょう。いずれも過去の実績で、今期の予想どおりになることを示すものではありません。
🧭 配当を支える利益。前期は増益、今期の利益を左右するものは何か
前期の増益には、本業の改善に加え、前の年の為替差損と減損損失がなくなった分が含まれます
2026年3月期の純利益は、前の年の28.1億円から46.9億円へ、18.8億円(66.9%)増えました。売上高733億円、営業利益64.8億円(32.1%増)、経常利益70.8億円と、売上も各段階の利益も過去最高です。ただ、この伸びをそのまま翌年も続く成長率として見ることはできません。増益の背景には、主に3つの動きがありました。
1つ目は、本業の営業利益が15.7億円増えたことです。売上総利益率(売上から原価を引いた利益の割合)は、25.7%から26.9%へ改善しました。会社は、国内事業の収益改善の取り組みが成果を上げたと説明しています。
また、給与や賞与などが増える一方、北米や中国で人件費をはじめとする経費を抑えたことで、販売費及び一般管理費の増加は1.7億円にとどまりました。
2つ目は、営業外の改善で約10億円です(経常利益の増加26.2億円から営業利益の増加分を除いて算出)。前の年に計上した海外子会社への貸付金の為替差損6.1億円がなくなり、この年は為替差益0.6億円でした。持分法による投資損益も、赤字から黒字に転じています。為替差損益は為替の動きで毎年、損にも益にもなります。
3つ目は、前の年に計上した減損損失(設備などの帳簿の価値を引き下げる損失)4.6億円が、この年にはなかったことです。前の年の4.6億円のうち、4.3億円は中国・武漢の子会社の設備でした。
一方、法人税等は9.5億円から21.7億円へ増えました(前の年は法人税等調整額のマイナスで、税金費用が小さくなっていました)。こうした損益の変動を経て、純利益は28.1億円から46.9億円へ増えました。
前期の増益には、本業の改善に加え、前年の為替差損や減損損失がなかったことも影響しています。今後の配当を考えるときは、純利益だけでなく、本業の利益の推移も確かめたいと思います。過去の売却益や減損などは、補足Bにまとめました。
部門別では、化成品部門が減収のまま増益、産業用素材部門が増収の6割強を占めました
化成品部門は、北米と中国の市況悪化で売上が1.4%減少する一方、営業利益は13.9億円から24.1億円へ増えました。理由は「不採算部門の見直しによる事業効率化や原材料価格の安定化により収益構造が大きく改善し」です。
産業用素材部門は売上が11.5%増え、全社の増収32.9億円のうち20.9億円がこの部門でした。自動車用防音材は「着実な成長を遂げました」とあります。機械部門は営業利益が2.0億円から4.2億円へ増えました。
全社の増収について会社は、「主要顧客の稼働が安定的に推移したこと」と、設備の検収(納めた設備を顧客が確認し、受け入れること)の増加を理由に挙げています。円安による押し上げも13.6億円あったとしています。国内の売上は393億円から432億円へ増え、アメリカは86億円から77億円へ、中国は102億円から96億円へ減りました。2023年に事業を引き継いだアメリカの子会社は、2026年3月期の売上75.2億円に対して経常利益0.5億円、純利益1.0億円です(有価証券報告書。連結売上の10%を超える子会社として損益が載っています)。
2027年3月期は減益の予想。第1四半期は増収減益で、売上総利益率が下がりました
2027年3月期の会社予想はこうです。
売上高740億円(0.9%増)、営業利益58億円(10.6%減)、経常利益62億円(12.5%減)、純利益44億円(6.3%減)。
決算短信だけでは、減益予想を要因別に分けて把握することはできませんでした。ここでは、通期予想の利益率を確認したうえで、第1四半期の部門別の動きを見ます。見通しの前提として、物価動向や為替相場の急激な変動、地政学リスクの長期化が景気を下押しする懸念が挙げられています。会社予想から計算した売上高営業利益率は7.8%で、会社が目標とする8%を下回ります。営業利益58億円と経常利益62億円の差から、営業外は差し引き4億円ほどのプラスと置いた形で、2026年3月期の6.0億円より小さい数字です(開示値から算出。営業外の前提を会社は書いていません)。
会社予想では、純利益が減る2027年3月期も、年間53円の配当に対する配当性向は30.1%です。予想利益に対して、配当がどの程度を占めるかを見る材料になります。ただし、利益の予想は変わることがあります。また、会社は現金を設備投資などにも使います。利益に対する配当の割合、実際に使える資金、会社の配当方針は、分けて確かめていきます。
5月の決算短信は、中東情勢に伴う原材料の調達や価格高騰のリスクについて「現時点では先行きが不透明なため、業績予想には織り込んでおりません」と書いています。第1四半期(4月から6月)の売上は193億円(11.7%増)、営業利益は15.5億円(3.8%減)、純利益は11.5億円(7.9%減)でした。売上総利益率は、前の年の同じ時期の27.3%から24.7%へ下がっています(開示値から算出)。8月の第1四半期決算短信は、自動車業界の状況として「中東情勢に起因する原材料価格の高騰やそれに伴う価格交渉の長期化」を不確定要素に挙げています。そのうえで「業績は概ね計画通りに推移しており」として、5月の予想を変えていません。業績予想に織り込んだかどうかについての記述はありません。
部門ごとにも見てみましょう。
・化成品部門=国内で新規商材が売上に加わり、売上は10.5%増えました。一方で「北米・中国市場では市況悪化や原材料価格の高騰等により収益が圧迫され、減益」でした(営業利益6.2%減)。
・機械部門=輸入設備で売上は55.0%増えました。一方、「大型物件の検収遅延」(顧客による大型設備の受け入れ確認が遅れたこと)で、営業利益は1.7億円から0.1億円へ93.6%減でした。
・産業用素材部門=自動車用防音材は「堅調に推移」し、家電用防音材で「価格競争の激化に伴う販売価格の下落」がありました(営業利益0.8%減)。
・増益の部門=化学品部門は、海外では減益でしたが、国内の新規大口案件に加えて「中東情勢に伴う原材料価格の高騰や供給不足に適切に対応したことで」増収増益でした。化工品とその他の2部門も増益です。
国内で伸びた事業がある一方、海外の一部では原材料高などが利益を圧迫した、というのが第1四半期の形です。
会社の目標は営業利益率とROEの8%以上。取り組みは、事業の見直し・投資・原価管理です
以下は会社の方針や目標であり、達成を約束するものではありません。会社は、営業利益率・ROEともに8%以上を目標としています。ROEは、株主の資本に対する純利益の割合です。2026年3月期は営業利益率8.8%、ROE9.7%で、いずれも目標を上回りました。
有価証券報告書の「対処すべき課題」9項目から、利益に関わる取り組みを3つ見てみます。
・製品と事業の見直し=「将来を見据えた『事業の選択と集中』を計画的に進め、次代の収益基盤となる『新市場の創造』を推進し」(有価証券報告書)。2026年3月期は、電動化を見据えた製品開発と提案活動の強化、不採算事業のポートフォリオの見直しと供給体制の最適化に取り組んだ、と決算短信にあります。
・生産・研究体制への投資=2026年3月期の設備投資額26億円(有価証券報告書)の主なものは、本体とメキシコ子会社の製造設備、アメリカ子会社の研究施設でした。研究開発費は10.5億円です。化成品部門は「次世代電動車向け製品の開発」を、産業用素材部門はハイブリッド車や電気自動車(BEV)を視野に入れた防音材の素材開発を挙げています。
・原価管理=「原価管理の徹底と生産の最適化を図り」とあります。
市場全体の台数だけでは、会社の売上は見通せません
自動車市場の台数と会社の売上は、同じ向きに動くとは限りません。納入先や製品構成に加え、統計と会社決算では対象や集計期間も異なるためです。米国や中国の市場の台数と会社の各地域の売上は補足Cに並べましたが、この比較だけで、会社のシェアや競争力が変化したとは判断していません。会社は化成品部門の減収を「北米・中国市場の市況悪化」と説明しています。市場全体の動きは背景として確認し、私は部門ごとの利益と会社の説明と合わせて見ていきます(統計の推移は補足C)。
原材料高の影響は、販売価格への上乗せや製品構成によって変わります
日本銀行の企業物価指数で、化学製品は2026年6月の速報で前年同月比14.4%の上昇でした。この指数は国内の化学製品全体の価格の動きで、会社が仕入れる原材料の価格そのものではありません。会社は第1四半期の減益理由に原材料価格の高騰を挙げています。利益への影響は、販売価格に上乗せできるか、どの製品が売れるかによっても変わります。指数だけで判断せず、会社の説明と実際の利益率を確かめていきます。
⚖️ 手元資金は、配当をどこまで支えるか
手元資金の厚みは、配当を考えるうえで支えになります。ただし、グループ全体にある現金を、そのまま追加の配当に使えるわけではありません。設備投資や日々の事業に残す資金も必要です。ここでは、配当を支える余力があるかと、会社がその余力を何に使う方針かを分けて見ていきましょう。
表C:直近9期のキャッシュ・フロー・配当金の支払額・現金
| 決算期 | 営業CF(億円) | 投資CF | 営業CF+投資CF | 配当金の支払額 | 現金及び現金同等物 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018年3月期 | 40.6 | △16.4 | 24.2 | 2.5 | 97.1 |
| 2019年3月期 | 46.8 | △17.2 | 29.5 | 2.8 | 111.3 |
| 2020年3月期 | 37.6 | △18.7 | 18.8 | 3.3 | 115.8 |
| 2021年3月期 | 43.2 | △18.0 | 25.1 | 2.4 | 133.8 |
| 2022年3月期 | 21.0 | △14.6 | 6.4 | 4.3 | 133.8 |
| 2023年3月期 | 41.6 | △25.0 | 16.5 | 4.0 | 151.5 |
| 2024年3月期 | 53.2 | △38.9 | 14.2 | 5.0 | 154.0 |
| 2025年3月期 | 57.1 | △13.7 | 43.3 | 5.8 | 187.2 |
| 2026年3月期 | 87.1 | △47.5 | 39.5 | 7.2 | 214.3 |
- 表中の△はマイナスを表します。各列は百万円単位の開示値を0.1億円未満で切り捨てています(そのため表の値どうしの引き算と0.1億円ずれることがあります)。
- 営業CF=本業で実際に出入りする現金です。投資CF=設備の取得や会社の買収、資産の売却に加えて、定期預金への預け入れや有価証券の購入も含む現金の出入りで、△は支出が収入を上回ったことを表します。
- 「営業CF+投資CF」は、営業活動と投資活動による現金収支の合計です。期末の現金残高には、このほか財務活動や為替換算なども影響します。
- 配当金の支払額は、キャッシュ・フロー計算書の「配当金の支払額」で、その年度中に実際に支払った配当です。決算短信の「配当の状況」に載る配当金総額(たとえば2026年3月期は13.2億円)とは、対象の時期が違います。非支配株主への配当は含みません。
- 現金及び現金同等物は、キャッシュ・フロー計算書の期末残高です。貸借対照表の「現金及び預金」(2026年3月末で257億円)とは範囲が違います。本文で「現金及び預金」と書くときは貸借対照表の値です。
- (出典:各年の決算短信、有価証券報告書 第99期)
年間53円の配当総額は約13億円。本業の現金収支と、投資に使う資金も合わせて見ます
年間53円に対応する配当金総額は13.2億円です(2026年3月期の決算短信「配当の状況」)。2026年3月期の営業CF87.1億円と比べると、約15%にあたります(開示値から算出。利益に対する配当性向ではなく、営業CFとの規模の比較です)。
ただし、この年の営業CFには、売上債権(受取手形や売掛金)の減少による19.9億円の押し上げも含まれます(決算短信)。毎年87.1億円を稼げると考えるのではなく、複数年の推移と、設備投資などに使う資金を合わせて見ています。2018年3月期から2025年3月期の営業CFは21.0億円から57.1億円の間で、2026年3月期の有形固定資産の取得は26.2億円でした。営業CFは9期すべてプラスで、「営業CF+投資CF」もすべての年でプラスです。
表Cの配当金の支払額7.2億円は、2026年3月期の年度中に実際に支払った額で、年間配当総額とは対象の時期が違います。2027年3月期の支払額は、2026年6月に支払った期末配当9.1億円と、当期の中間配当(予想どおり26.5円なら)を合わせた額になります。自己株式を除く約2,502万株で計算すると、15億円台です。手元資金の厚みが追加の還元につながるかどうかは、資料からは分かりません(配当の方針は📊)。取得枠を設けた自己株式の取得の開示は、2022年7月より後には確認できていません(2026年10月19日に開示一覧で確認。経緯は補足B)。
現金及び預金257億円に対して、有利子負債は45億円です
貸借対照表の現金及び預金は257億円(2026年3月末)で、借入金とリース債務を合わせた有利子負債45億円を大きく上回ります。有利子負債は前の年から7億円減りました(有価証券報告書)。自己資本比率は66.2%です。資金の方針は「短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており」とあります。
株主に配当を払うのは、パーカーコーポレーション本体です
連結の利益には、子会社の利益も含まれます。一方、株主への配当を支払うのはパーカーコーポレーション本体です。子会社が稼いだ利益が、そのまま本体の現金になるわけではありません。2026年3月期の配当性向は、連結では28.3%、本体の単体決算では60.7%でした(有価証券報告書。単体の純利益21.8億円に対する割合)。配当を支える資金を見るときは、連結の利益だけでなく、子会社から本体への配当なども確認材料になります。前の年は、中国の子会社2社から18.4億円の配当を受け取っていました。この記事で使う配当性向は、決算短信が開示する連結の値です。
どれも過去の実績で、将来の配当を約束するものではありません。配当を支える財務の余力を考える材料として見ています。
☕ おわりに ― 53円を支える材料と、次に確かめたいこと
「パーカーコーポレーション(9845)は、年間53円の配当をこれからも支えられそうか」。今回の資料では、利益と手元資金の両面に、配当を支える材料があると私は読みました。
前期の増配には、利益の増加と、利益のうち配当に回す割合の上昇が重なっています。今期は減益の予想ですが、53円を配当した場合の配当性向は会社予想で30.1%です。
ただし、会社が示しているのは安定配当の方針で、53円を下限とする約束ではありません。手元資金が厚いことだけで、さらに増配するとも判断できません。利益の推移と、投資・株主還元への資金の振り向け方を、私は見ていきたいと思います。
次の決算では、次の3点を確かめます。ご自身で確かめるときの手がかりとして使っていただけたら、うれしいです。
・中間配当と通期予想
中間配当26.5円がどう決まり、業績・配当予想に変更があるか。53円という予想の前提が変わっていないかを、決算短信の1ページ目の「配当の状況」と「業績予想」の表で見ます。今期の中間決算の日程は、会社の開示で確かめます。
・本業の利益
原材料高や海外市場の影響が、部門ごとの利益にどう表れるか。売上だけでなく、損益計算書から計算する売上総利益率(第1四半期は24.7%)も、前の年の同じ時期と比べます。
・手元資金の動き
配当や投資に資金を使いながら、現金がどう増減するか。貸借対照表の「現金及び預金」(2026年3月末で257億円)の残高に加え、会社が資金の使い道をどう説明するかも確認します。
来年5月の決算短信では、2028年3月期の配当予想が何円と書かれるかも見ます。株価が割安か割高かについては、この記事では触れていません。会社の資料で私の見落としに気づいた方は、教えてもらえるとうれしいです。配当を支える力があることと、会社が配当を増やすと決めることは、同じではありません。その両方を分けて、これからの決算を追っていきます。
みなさんは、どう考えますか。
🔍 補足 ― 本文で触れた経緯と統計
ここからは補足です。まず参考として株価と配当利回りを載せ、その後に、本文で触れた経緯と統計をA〜Cの順にまとめました。必要な項目からご覧ください。
参考:株価と配当利回り
株価1,318円(2026年10月23日の東京証券取引所の終値)で計算すると、配当利回りは次のとおりです。
・2026年3月期の実績配当53円で計算:約4.0%
・2027年3月期の会社予想配当53円で計算:約4.0%
※税引前で、小数第2位以下を切り捨てています。実績の配当と会社予想の配当で計算した参考の数字です。予想配当は変わることがあり、利回りも株価で変わります。将来の配当・利回りを約束するものではありません。
補足A:会社の成り立ちと大株主
1951年に、金属の表面処理を手がける日本パーカライジングの営業部門から分かれ、パーカー商事という名前で始まりました(有価証券報告書の沿革)。1989年に店頭市場に登録し、2005年に東京証券取引所の第二部に上場しました。いまはスタンダード市場に上場し、従業員は連結で2,045名です。親会社はありません。
日本パーカライジングは、2026年6月25日の開示によると、議決権の24.2%を直接持っています。合算対象分(同じ意思で議決権を使うとみなされる分)を含めた割合は25.6%です。開示の区分は「その他の関係会社」で、親会社ではないものの会社に大きな影響を持つ株主として開示される区分です。パーカーコーポレーションは同社の持分法適用会社(出資先の利益を、持ち分に応じて自社の決算に取り込む相手)です。会社は「日本パーカライジング株式会社(東証プライム市場)グループに属しております」と書いています。同社への工業用薬品などの販売は13億円で連結売上高の2%に届かず、同社からの購入は3億円です(有価証券報告書)。両社の工業用薬品は「用途が全く異なることから同社との競合は存在しておりません」というのが会社の説明です。出典は2026年6月25日の「支配株主等に関する事項について」です。
補足B:過去の利益に影響した売却益・減損などと、自己株式取得
- 2014年3月期=2013年12月に持分法適用会社だったアサヒゴム(いまのパーカーアサヒ)を子会社化。純利益は16.4億円で、この年度には負ののれん発生益(買った値段より相手の純資産が大きいときに出る会計上の利益)2.9億円も計上されています。
- 2017年3月期=「営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益がすべて過去最高となりました」を理由に、期末に特別配当1円(17期でこの1回だけ)。年間8.5円。
- 2021年3月期=純利益23.7億円。この年度には、特別利益として投資有価証券売却益10.9億円も計上されています(経緯は📊)。
- 2022年3月期=純利益35.9%減。理由は、子会社の繰延税金資産の取り崩し2.3億円と、前の年の投資有価証券売却益の消滅です。本業は増収増益で、配当は14円へ。
- 2023年3月期=2023年5月の決算短信で、2024年3月期の業績予想と配当予想を「未定」としました。同年4月3日に買収した新規子会社が事業に及ぼす影響を「見極めている段階」だったためです。
- 2024年3月期=負ののれん発生益7.9億円と、中国子会社の減損損失6.5億円(「中国市場環境の著しい悪化」)。配当22円。
- 2025年3月期=純利益21.9%減。会社が減益の理由に挙げたのは、前の年の負ののれん発生益7.9億円がなくなったことです。この年は為替差損6.1億円と減損損失4.6億円もありました。配当は25円へ。
- 自己株式=取得枠を設けた取得は4回で、合わせて約89万株、4.4億円。時期は2018年11月、2020年3月から9月、2020年12月、2021年11月から2022年6月です。理由は4回とも「機動的な資本政策」で、2回は「株主還元を図るため」を添えています。2022年7月より後の開示は確認できていません(2026年10月19日に開示一覧で確認)。
補足C:公的統計の推移を、会社の数字と並べる
🧭で触れた統計の推移です。統計は暦年、会社の数字は4月から翌年3月までで、期間は3か月ずれています。日本の生産、米国の販売、中国の生産は同じ指標ではないので、3つの国を横に並べて優劣を比べることはしません。会社の売上は、2025年3月期から2026年3月期への変化です。
- 国内=四輪車の生産台数は、2010年の962万台から2021年に784万台、2022年に783万台まで下がりました。2023年に900万台近くへ増えたあと、2025年は841万台です(経済産業省 生産動態統計)。会社の国内売上は、393億円から432億円へ増えました。
- 米国=ライトビークル(乗用車と小型トラック)の販売台数は、2010年の1,155万台から2025年の1,625万台になりました(米商務省経済分析局。未季節調整の月次の値を1年分合計した数字で、元のデータは民間のOmdia社の集計)。会社のアメリカ売上は、86億円から77億円へ減りました。
- 中国=自動車の生産台数は、2012年の1,927万台から2025年の3,477万台になり、そのうち新エネルギー車は1,652万台です。中国国家統計局の統計公報に載った各年の初出の値で、翌年以降の改定は反映していません。会社の中国売上は、102億円から96億円へ減りました。
- 化学製品の価格=日本銀行の企業物価指数(2020年=100)で、化学製品は2010年の111.3から2024年の117.6、2025年の114.4です。同じ期間に総平均は97.1から126.7へ上がり、化学製品の上がり方はそれより小さい数字でした。2024年から2025年へ下がった年に、会社は化成品部門の増益の理由に「原材料価格の安定化」を挙げています。2026年6月の速報では化学製品は130.0で、前年同月比14.4%の上昇です(総平均は7.1%)。
(この補足の公的統計は、経済産業省、米商務省経済分析局、中国国家統計局、日本銀行の公表値です。企業物価の年の値は月次の指数の1年分の平均、国内の生産台数の2021年以降は品目を合算した値です(いずれも公表値から算出)。増減率の小数は、表示する桁より下を切り捨てて示しています。)
出典・一次ソース
主な資料には、原資料または掲載先へのリンクを付けています(別のタブで開きます)。
調査範囲=決算短信15期(2012年3月期から2026年3月期)と四半期決算短信、有価証券報告書(第83期から第86期と第99期)、2018年以降の配当と自己株式に関する適時開示、会社サイトの配当方針のページ。計画名・期間・数値目標を掲げた中期経営計画は、適時開示の一覧・会社のIRニュース・有価証券報告書に見当たらず、決算短信には決算補足説明資料の作成と決算説明会の開催がいずれも「無」と記載されています。配当性向の目標、DOE(純資産に対する配当の割合)の目標、累進配当、配当の下限額、配当の判断に使う指標や基準値は、この範囲では確認できませんでした。配当方針の文は、確認できたいちばん古い2010年3月期の有価証券報告書から同じ趣旨で、決算短信の翌期の予想には2022年3月期の決算短信から「財政状況を勘案し」が添えられています。
- パーカーコーポレーション 決算短信(2012年3月期〜2026年3月期・2026年3月期第3四半期・2027年3月期第1四半期)=2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月3日)ほか。これより前の決算短信は、IRBANKの書類一覧による(2012年3月期と2013年3月期は、Wayback Machineに保存された会社サイトの原本)。2010年3月期と2011年3月期の決算短信は見つからず、有価証券報告書の値を使いました。
- パーカーコーポレーション 通期連結業績予想の修正並びに剰余金の配当(中間配当・増配)及び期末配当予想の修正に関するお知らせ(2025年11月4日)、剰余金の配当(増配)に関するお知らせ(2026年5月12日)、業績予想の修正に関するお知らせ(2024年2月5日)、期末配当予想の修正に関するお知らせ(2021年5月11日)、支配株主等に関する事項について(2026年6月25日)、自己株式の取得に関する開示(2018年11月20日・2020年3月16日・2020年10月1日・2020年12月21日・22日・2021年11月19日・2022年7月5日)=IRBANKの書類一覧による
- パーカーコーポレーション 有価証券報告書(第99期・2026年3月期・2026年6月24日提出)(EDINET)、有価証券報告書 第83期から第86期
- パーカーコーポレーション 配当方針・配当金の推移(会社サイト)
- 経済産業省 生産動態統計 機械統計年報(四輪車生産台数・e-Stat掲載分)
- 米商務省経済分析局(BEA) Motor Vehicle Unit Retail Sales(Table 6 Light Vehicle and Total Vehicle Sales)
- 中国国家統計局 国民経済と社会発展統計公報(各年の自動車生産台数)
- 日本銀行 企業物価指数(2020年基準)(化学製品・総平均、2026年6月速報を含む)
免責
この記事は、公開情報をもとに筆者が整理した観察ノートであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。将来の業績・配当・株価を約束するものではありません。参考利回りは記載の基準日の終値に基づく参考値で、株価が動けば変わります。実績と会社予想は別物です。試算は前提つきの参考値です。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。記載の数値は各社の開示資料に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。
著者:ミーナ/更新日:2026-10-25